CXとは

CX(カスタマーエクスペリエンス)の概念をひと言で教えてほしい、と言われたらどう説明しますか。

製品やサービスには、「知覚価値」というものがあります。その価格に見合うものかどうか、顧客や消費者が抱く総合的な判断価値のことです。レストランなら、味覚や清潔さ、雰囲気などが重要な知覚価値。家電製品なら、使いやすさ、デザイン、耐久性など。(実はもっと複雑ですが…)

一方CXでは、「知覚価値」だけではなく、顧客・消費者が、製品やサービスに興味を持ってから購買・利用まで、一連の、起点から完了までの全体験の流れを「カスタマージャーニー」として、つまり「体験価値」として捉えます。(機能や操作性を正しく理解してもらうことから、購買後の修理やメンテナンスなどまで含む)

顧客が体験する一連の流れにおいて初期の期待を超える満足感を作り出すことで(その結果、体験価値が向上する)、高いロイヤルティが生まれ、顧客はその企業の製品やサービスを使い続けるだけでなく、再購買し、さらには推奨のクチコミによって新しい顧客も生まれてくるわけです。(その逆もしかり。CXをしっかりマネジメントしていなければ、ロイヤルティは下がり、顧客が離反するだけでなく、ネガティブなクチコミの評判が広まる)

またCXでは、顧客を単なる「購入者」ではなく、「利用者」や「生活者」として捉えます。そのため、企業が提供するコミュニケーション、カスタマーサービス、ユーザーサポートなどのあり方や品質が非常に重視されるようになります。顧客を「利用者」や「生活者」として捉え、把握するためには、これまで以上に「顧客を知る」必要があり、「販売と購入」という狭い枠を広げ、利用・生活者のリアルな現場を視野に置いた文字通りの「顧客視点」にマインドセットを転換する必要があります。

1.点(知覚価値)から線(体験価値)へ
2.顧客体験の最初から最後まで(カスタマージャーニー)を対象
3.顧客は「購入者」でなく「利用者、生活者」と捉える
4.供給者視点から顧客視点へ
CXを強化するサービスの役割

顧客を満足させロイヤルティを高めるには、苦情や問い合わせに対応することはもちろんですが、「サービス、サポートを通した問題解決」を通じて、その企業に対する信頼を高めることが重要になります。

では顧客がトラブルに遭遇した時、特に不具合や操作方法などで困ったり、不安を感じたりした時に、顧客はヘルプを求めて企業にコンタクトしてくれるでしょうか。

実は、CXを理解するためにカスタマージャーニー全体を対象にした市場調査を実施してみると、トラブルに遭遇してもヘルプを求めない顧客が大半、あるいはほとんどだという事実が浮かび上がってきます。問題が解決していないのだから、その顧客はいずれ製品の使用をやめて、ロイヤルティが弱まり他社製品に移ってしまう、という負のスパイラルが見えてきます。

逆に、トラブルを体験した顧客を企業側がサポートし問題解決につなげれば、顧客のロイヤルティは回復し、再購買やさらに推奨のクチコミにつながる確率は高くなるのです。

市場に出回っている自社製品を利用する既存顧客がトラブルを体験しても企業にコンタクトしてくれれば、彼らのロイヤルティを守れる可能性が生まれます。その接点さえも作れないと再購買顧客の割合はどんどんと低くなってしまいます。サービスへの投資が、CXを強化し、さらには企業成長と収益貢献に密接な関係があることが理解できるでしょう。

この考え方は、現在CCMC社の副会長(Vice Chairman)を務めるジョン・グッドマン(John Goodman)氏が1970年代に実証的な市場調査で発見して以来、「グッドマンの法則」として知られているマーケティング&サービスマネジメントの理論です。

グッドマンの法則
  • 1. ほとんどの顧客は、企業との衝突を嫌がったり、あきらめ感から、苦情を申し立てない
  • 2. 苦情が解決した顧客のロイヤルティは、苦情を申し立てなかった顧客よりも高く、将来的な再購買に結びつく(サービスリカバリー・パラドクス :SRP)
  • 3. 好意的なクチコミを生み出す効果的なアプローチには、想定されるトラブルを回避できる予防的な情報提供、製品の価値を理解していただくための案内や情報、顧客との応対において情緒的なつながりを生むこと、などが挙げられる
  • 4. 不満顧客のネガティブなクチコミは、満足した顧客の好意的なクチコミの影響度を凌駕し、マーケティング活動にブレーキがかかる
CXの実践に向けて

CXの実践を開始すると、消費者・顧客とのコミュニケーションを見直し、サービス部門を戦略的に位置付け、プロフィットセンターに変革する流れをつくっていくことになります。また、組織横断的なプロジェクトチームが生まれ、サービス部門、IT部門、マーケティング部門などが協働し、しっかりした組織全体の活動へとつながっていくでしょう。

このサイトが、CXの実践者の小さくても大きくても意味のある取り組みにつながり、そして実践者どうしの交流が生まれる場所になることを願っています。成果を急がなくても、小さな実践の積み重ねが大きな成功に結びつくことでしょう。
以下は一例です。

Before
見直し

  • ・顧客コミュニケーション
  • ・サービス部門の
  •  ①戦略化
  •  ②プロフィットセンター化
  • ・横断的組織の生成、他部門相互連携
After
CX3.0®とは何か

※CX3.0®(シーエックスサンテンゼロ)は、CCMC/株式会社ラーニングイットの登録商標です。(以下CX3.0®と表示)

ここではさらに「CXの考え方や実践の変遷」をVOCや顧客視点を重視する経営の推移として見てみましょう。変遷をCX1.0、CX2.0、CX3.0®の3段階として整理すると、それぞれ20年程度のスパンで区切ることができます。

1)CX1.0 は、1970年代以降、「顧客の声に耳を傾ける」ことが重視され、顧客満足(CS)をゴールとしたマネジメント手法としてTQM(総合的品質管理)が普及した。
2)CX2.0は、1990年代以降のCRM(カスタマーリレーションシップ・マネジメント)が活発に導入された時代を指す。サービスやサポートをカスタマーセンターに集約化すると同時に、顧客対応を効率的にマネジメントするテクノロジーやツールが大きく進化した。
3)CX3.0®は、ジョン・グッドマンによって提唱されたが、カスタマーサービスの概念をさらに広げ、サービスを「収益性を強化する手段」として位置付けている。特長としては、カスタマーセンターの対応だけでは「受け身」であり、顧客がトラブルや疑問を感じて申し出るのを待たずに、能動的、予防的なサービスを展開する。また、顧客とのエモーショナルなコネクションを作り出すことによってロイヤルティをさらに強化できるとしている。エモーショナルコネクションは、人に頼らずとも効果的なテクノロジーによって実現できる、としている。

CX1.0
TQM時代
1970年代〜
(VOCとCS)
CX2.0
CRM時代
1990年代〜
(統合化とツール)
CX3.0®
顧客理解の時代
2010年代〜
(サービスと収益化)
  • ・サービスやサポートをカスタマーセンターに集約化
  • ・顧客対応を効率的にマネジメントするテクノロジーやツールの進化
  • ・顧客関係管理(CRM)ブーム
  • ・サービスやサポートのカスタマーセンターへの統合
  • ・顧客対応の効率化、ツールの進化
  • ・カスタマーサービス概念の拡張
  • ・収益強化手段としてのサービス
  • ・能動的、予防的サービス
  • ・エモーショナルコネクション