「顧客体験の教科書 ~ 収益を生み出すロイヤルカスタマーのつくり方」
(原著 Customer Experience 3.0)ジョン・グッドマン著、畑中伸介訳、2016年・東洋経済新報社刊
著者は、一般的に考えられている古い「顧客像」を払拭して、顧客の「行動や心理」をまず理解すべきだと言います。グッドマンの法則でも触れられている、「大半の顧客は苦情を申し出ず、沈黙のままロイヤルティを失い離反してしまう」という事実は今も変わらないと説きます。その上で、今日の技術革新(スマートフォン、SNS、ビッグデータ、音声分析など)により容易に得られるようになった「顧客の声(VOC)」の活用も踏まえ、顧客体験全体を改めて捉え直すことの大事さを訴えます。
そして「顧客体験(CX)」のフレームワークのもとで、顧客を購入者としてだけではなく、利用者としてその体験の全過程(カスタマージャーニー)を長期視点で再点検・再構築し、「顧客行動」を予測できるレベルの視座を持つことでのみ、企業の継続的な収益に資する「ロイヤルカスタマー」を育むことができると主張しています。
本書では、著者の40年の現場実践に基づき、苦情やクチコミなどへの施策・打ち手による財務インパクトを統合し、損益を数値化する具体的な方法も紹介しています。こうしたシミュレーションができる実証性も他にはない特徴の一つでしょう。企業経営者、マーケティング・企画部門、営業部門、コンタクトセンターをはじめとしたサービス部門関係者にとって、必携・必読の一冊になると思います。